築100年を超える古民家を再生
2022年、再生工舎のリノベーションギャラリーが完成しました。スタジオ横に立っていた築100年を超える農家さんの古民家をリノベーションしたギャラリーです。
日本の古民家には和風の趣があり、田の字型の整った間取り、太い柱・梁で構成された立派な小屋組みなど、魅力的な部分が多くあります。しかし、基礎もなく土壁や隙間の多い建具で造られているため、耐震性・断熱性が非常に低く、また、部材の劣化・白蟻被害なども多くあり、安心・快適に暮らすのが難しいというのが現実です。
再生工舎のリノベーションギャラリーも、改修前は性能が低く、劣化部分も多くある古民家でした。その古民家をリノベーションにより、性能を向上させ、古民家の持つポテンシャルも最大限に生かしています。具体的には、天井裏に隠れていた小屋組みを現して開放的な空間をつくり、建具が入っていた差鴨居はロフト床の支えに利用しています。また、180㎜角の既存の柱はそのまま利用し、耐震補強としての鉄筋コンクリートベタ基礎をつくることで、土間のある空間も実現しています。
元々の古民家を上・下・横に広げた大空間では、雰囲気や居心地の良さはもちろん、薪ストーブの暖かさも体感していただけます。木製建具・造作キッチン・自然素材の仕上げなども見どころです。「再生工舎の古民家リノベーション」を体現したこのリノベーションギャラリーに、ぜひ一度足をお運びください。
空間のポイント
大空間へと導く洗練されたエントランス
建物のかたちは以前のまま、屋根瓦も元の瓦をそのままとして、外観は昔の趣を残しています。外壁の黒い焼杉板と木製建具が古民家の良さを引き立てています。元々玄関だったところは改修してエントランスに。アプローチから続く土間床はタイル張りで仕上げ、そのまま室内の土間床につながっています。杉材で造作したエントランスの引戸が皆さまをお迎えいたします。
梁や小屋束が印象的な大空間
大小6つの和室の続き間をワンルームに改修し、南側の広縁も土間に変更して空間に取り込んでいます。さらに、梁や小屋束が現れるほど天井を高くしているため、まさに「大空間」といった造りに。仕上げ材は珪藻土の壁や、30㎜厚の杉のフローリングなどの自然素材で構成しています。この空間を暖めているのは、オーブン付きで料理も楽しめる薪ストーブ1台のみです。建物全体に施した万全の断熱性能と高い暖房能力をもつ薪ストーブが叶える暖かい空間をぜひご体感ください。
空間に馴染むキッチンと心地よい和室
住まいのモデルとなるように、コンパクトなキッチンと寝室になる和室を設けています。設置した対面型キッチンはリーズナブルなシステムキッチンですが、タモ材のカウンターや杉の腰壁と一体化させて造作キッチンのような雰囲気をもたせています。また、背面の家具も木製でつくるなど、キッチン全体が空間に馴染むよう仕上げています。
ギャラリー奥には4.5畳の和室を設けています。和紙畳の床、珪藻土の壁、塗装仕上げの天井でつくった和室を仕切る障子は、もともとあったガラス戸を手入れして再利用しました。古い建具もリメイクして大切に使うことも、弊社のリノベーションの姿勢です
性能向上リノベーション
暮らし心地の良い家とは、使いやすい間取りや明るいインテリア、便利な設備機器などが整備されていることはもちろんですが、いつ起こるか分からない地震に不安にならないこと、厚さ・寒さを我慢しないこと、エネルギー消費量を抑えた経済的に優しいことなども重要な要素です。リノベーションギャラリーも元は性能の低い古民家でしたが、古民家リノベーションのモデルとなるように耐震改修・断熱改修を行っています。
【耐震改修】鉄筋コンクリートベタ基礎を構築した上で、上部軸組を構造パネルで耐震補強。上部構造評点1.01。
【温熱改修】天井・壁をセルロースファイバーにて断熱+床断熱+開口部改修。既存UA値1.9→改修後UA値0.52まで向上。